Service少額短期保険業の概要

1.少額短期保険業とは

少額短期保険業とは、「保険業のうち、保険期間が2年以内の政令で定める期間であって、 保険金額が1,000万円を超えない範囲内において政令で定める金額以下の保険のみを引き受ける事業をいう」とされている。
保険業法第2条第17項

少額短期保険業には生命保険業と損害保険業の兼営禁止規定がない。
保険業法施行令第1条の5

  • 1)一の被保険者について引き受ける保険金額の上限
    保険業法施行令第1条の6

    少額短期保険業では、次のとおり保険の区分に応じて1被保険者について引受ける保険金額の上限が設けられている。
    また、①~⑥の保険の保険金額の合計額は1,000万円が上限となる。

    保険種類 金額
    ① 死亡保険 300万円以下
    ② 医療保険(傷害疾病保険) 80万円以下
    ③ 疾病を原因とする重度障害保険 300万円以下
    ④ 傷害を原因とする特定重度障害保険(※1) 600万円以下
    ⑤ 傷害死亡保険
     (調整規程付傷害死亡保険)
    300万円以下
    (600万円)
    ⑥ 損害保険 1,000万円以下
    ⑦ 低発生率保険(※2) 1,000万円以下
    • ※1 傷害を原因とする特定重度障害保険の保険金額について

      死亡保険、傷害死亡保険または重度障害保険が同時に付保されている場合には、 特定重度障害保険の支払額から死亡保険、傷害死亡保険または重度障害保険の支払額を減額されるものに限る。

    • ※2 低発生率保険について

      低発生率保険とは、損害保険のうち、特に保険事故の発生率が低いと見込まれるものであり、 個人の日常生活に伴う損害賠償責任を対象する保険(自動車の運行に係るものを除く)をいう。

  • 2)1の保険契約者について引き受ける保険金額の上限

    1保険契約者について引受ける上記の保険の区分に応じた保険金額の合計額(「総保険金額」という)について、 それぞれの区分に定める金額の100倍の金額(「上限総保険金額」という)を超える保険の引受けを行ってはならない。
    保険業法施行令第38条の9

2.少額短期保険業者とは

少額短期保険業者とは、内閣総理大臣の登録を受けて、少額短期保険業を行うものをいう。
保険業法第2条第18項

内閣総理大臣の登録を受けた者は、保険業法第3条第1項にかかわらず保険業を営むことができるとされている。
保険業法272条第1項

3.少額短期保険の主要分野

生命保険会社や損害保険会社が提供する総合的な保障とはことなり、 少額短期保険業者は特定のリスクに特化した保険を提供していることが多い。
少額短期保険には、大きく分けて「家財」「生保・医療」「ペット」「費用・その他」の4分野が存在する。

保険商品分類
保険カテゴリー 商品説明
賃貸住宅等に係る家財保険 主に賃貸住宅入居者を対象とした家財保険と借家人賠償責任保険のセット商品
生命保険・医療保険 死亡保障と入院保障の単独あるいはセット商品
ペット保険 犬・猫を中心にペットの入院・通院および手術の補償をする商品
費用・その他の保険 地震費用保険、スマホ保険、弁護士費用保険、キャンセル保険など

4.少額短期保険業に対する法規制

少額短期保険業は、保険金額が少額で保険期間が2年以内の短期の保険のみの引受を行うものであることから、保険会社と比較して簡素な規制となっている。

少額短期保険業者に適用される主な規制の概要
規制区分 項目 内容
参入規制・資格等 監督官庁との関係 財務局による登録制(登録拒否事由あり)
組織形態 株式会社または相互会社
最低資本金・基金 1000万円
供託金 営業保証金の供託:前事業年度の年間収受保険料×5%+1,000万円
事業規模に関する規制 年間収受保険料 50億円以下(収受保険料+再保険返戻金等当事業年度に支払う再保険料・解約返戻金で算出)
業務に関する規制 兼業規制 原則専業(付随業務・少額短期保険業の関連業務が認められる)
主な付随業務 他の少額短期保険事業者・保険会社のための事務の代行、契約締結代理、損害査定代理
アームスレングス・ルール 子会社・持株会社等の特定関係者との所定の取引・行為の禁止が適用
生損兼営 生損兼営可能
商品審査・規制 基礎書類等 定款、事業方法書、普通保険約款、保険料および責任準備金の算出方法書
商品審査 事前届出制(届出の60日後(短縮・延長可)より発効) 
注)事業方法書・普通保険約款の審査基準は保険会社と同じ/算出方法書は保険計理人の意見書を添付し、事前審査を行わない
保険期間の規制 生命保険・第三分野保険は1年以内、損害保険は2年以内
保険金額の規制 被保険者について保険種類ごとに以下の上限内で、かつ1~カの保険の保険金額の合計額が1,000万円以下(キの保険は別枠) 
保険種類 金額
ア 死亡保険 300万円以下
イ 医療保険(傷害疾病保険) 80万円以下
ウ 疾病を原因とする重度障害保険 300万円以下
エ 傷害を原因とする特定重度障害保険 600万円以下
オ 傷害死亡保険
(調整規程付傷害死亡保険)
300万円以下
(600万円)
カ 損害保険 1,000万円以下
キ 低発生率保険 1,000万円以下
取扱うことのできない保険商品等 以下の保険商品は取扱うことができない
引受けられない保険の種類
① 人の生存に関し、一定額の保険金を支払うことを約する保険
② 保険期間の満了後満期返戻金を支払いを約する保険
③ 特別勘定を設けなければならない保険
④ 再保険
⑤ 保険料または保険金、返戻金その他の給付金の額が外国通貨で表示された保険
⑥ 保険金の全部または一部を定期的に、または分割払いの方法により支払う保険であってその支払の期間が1年を超えるもの
資産運用に関する規制 資産運用 預貯金(外貨建を除く)、国債、地方債等に限定
経理に関する規制 業務報告書 中間業務報告書 ※業務報告書の作成・提出義務
※少額短期保険業者の場合は資本金3億円以上の場合
情報開示 ディスクローズ誌の備置・公衆縦覧の義務
保険契約準備金 責任準備金(普通責任準備金、異常危険準備金、契約者配当準備金※等)、支払備金の積立義務
※生命保険会社の社員配当準備金・契約者配当準備金は責任準備金に含めない
保険計理人 保険計理人の選任・届出義務
保険募集に関する規制等 登録規制 募集者(少額短期保険募集人・生命保険募集人・損害保険代理店)の登録義務
行為規制 契約締結・募集時の禁止行為※が適用
※ 虚偽告知・重要事項不告知勧奨・不当乗換募集行為・特別利益提供・契約内容の違法比較…等
顧客に対する説明義務(所属会社等の商号・名称、代理・媒介の別、募集人の商号・氏名)
損害賠償義務 募集行為(少額短期保険募集人・生命保険募集人・損害保険代理店)の募集行為に伴う契約者への賠償責任義務を負う
クーリング・オフ 適用あり(保険期間1年未満は適用除外)
監督官庁による検査・監督等 検査・監督 金融庁・財務局による検査・監督
報告徴求・業務改善命令・業務停止命令等
健全性基準 ソルベンシーマージン比率規制適用
契約者保護 契約者保護機構 保護機構なし
「保証金の供託制度」により契約者保護に配慮
金融ADR制度 苦情処理・紛争解決措置義務
対応機関として、日本少額短期保険協会に設置の「少額短期保険相談室」
その他 外部監査 資本金3億円以上の会社は必要
子会社の範囲 業務に従属・付随・関連する法定された業務を専ら営む会社のみ
(主務大臣による承認が必要)

各項目に関する規制は以下よりご覧いただけます。