M&Aは、新規ビジネスへの参入や拡大のための手法として定着してきました。
少額短期保険会社のM&Aも近時は盛んになってきましたが、金融保険事業という特殊性がありますので、
一般事業会社のM&Aとは事情が大きく異なります。
弊社は、少額短期保険ビジネスに精通したM&Aアドバイザリー・ファームとして、
多くの少額短期保険会社のM&Aに携わってきました。
豊富な経験と知見に裏打ちされたM&Aファームとしてご期待にそえると自負しております。
弊社がサポートしてきたM&Aには、単純な株式の100%取得に加え、株式取得後の少額短期保険会社の合併を伴うケースが多くあります。
合併を伴うケースにおいては、2つの少額短期保険会社の株式を同一親会社が100%取得し、税務上の完全支配を実現してから合併を行い、消滅会社の繰越欠損金による税効果を得ることがしばしば行われております。これは、少額短期保険会社固有のストラクチャーではなく、一般事業会社でも見受けられます。
一方、少額短期保険会社固有のケースとしては、ある特殊な状況にある少額短期保険会社は、合併に際して消滅会社になることができない場合があります。これは会社法の規制ではなく、保険関連法規の特殊な規制です。このような場合には、通常であれば存続会社となるべき基幹少額短期保険会社を消滅会社として、企業結合を行います。このような、会社法とは異なる少額短期保険業における特殊事例に関しても弊社はアドバイザーとしてのサポート経験があります。会社法だけでなく、保険関連法規にも精通していることが、少額短期保険会社のM&Aアドバイザーに求められます。
M&Aにおける企業価値算定は、一般事業会社のケースであっても簡単ではありません。そもそも、絶対的に正しい企業価値が存在しないことは少額短期保険会社であっても異なりません。
少額短期保険会社のバリュエーションにおいては、将来のフリー・キャッシュ・フローをベースに「キャッシュ・フリー&デット・フリー」ベースの企業価値(Enterprise Value)を算定し、ネット・キャッシュを加えて株式価値(Equity Value)とする手法を用いるのがオーソドックスです。この手法自体は、事業会社のバリュエーションでもよく見受けられますが、少額短期保険会社の場合は、一般の企業会計とは異なる保険会計が採用されていることから、将来のフリー・キャッシュ・フローの測定も容易ではありません。保険会計における保険契約準備金(未経過責任準備金・初年度収支残・支払備金・IBNR・異常危険準備金)の計上・取崩しとそれらに関連する税法の規定を熟知していなければなりません。
保険会計と保険会社税務に精通していることが、少額短期保険会社の企業価値算定を行うための必須要件となります。
保険は、あらかじめ確率・統計に基づいて算出された保険料を保険契約者から収受し、後日、保険事故が発生した場合に保険金受取人に対して保険金を支払います。保険事故が発生してから保険金が支払われるまでの期間は、保険種類によっても異なりますし、訴訟などを伴う場合など、個別事情にも左右されます。また、IBNR(Incurred But Not Report Loss)は、保険会社への事故通知が遅れているので、事故の発生から保険金の支払いまでの期間は長引くのが一般的です。ここで重要なことは、「保険会社の主要なコストである保険金支払いは事後的に確定する」という点です。コストが将来にならなければ分からない(確定しない)のが保険事業の特性です。
従いまして、事業リスクの分析も確率・統計手法を併用した将来予測が不可欠になります。思っていたより保険金の支払いが多く、一見、良好な利益率と思われた保険事業が、事後的には厳しい経営状況を招くこともあります。
このような保険ビジネスの事業リスクを把握・測定するには、保険理論や保険会計の知識に裏付けられた経験と知見が求められます。
保険は、確率と統計をベースに設計されています。過去の統計や将来の予測手法などを用いて保険料を算出するのですが、マーケットにおける価格を無視することもできません。保険数理手法を用いて算出された保険料は、理論的に正しいとしても、同業他社に比べて著しく高額であるなら、実際にマーケットにおいて保険契約を獲得することは困難です。保険ビジネスは慈善事業ではありませんので、保険数理の手法を用いた分析に加え、多面的な分析・評価による経営戦略を用いて採算が取れるようにビジネス・モデルが構築されます。
欧米では、成長著しい企業がM&Aマーケットにおいて売りに出されることが多く、成長企業が成長企業を買収して、一気にビジネスを拡大することに積極的ですが、残念ながら、日本ではビジネスに行き詰った企業がM&Aマーケットでの売り案件となることがほとんどです。つまり、利益が確保できず、経営困難になっている少額短期保険会社がM&Aマーケットで売り案件となって出てくることが多く、保険商品の保険料水準を保険数理手法を用いて分析し、買収後に健全な事業体に変革できるかを見極めなければなりません。
弊社では、M&A対象会社に対するビジネス・デュー・デリジェンス、財務デュー・デリジェンス、税務デュー・デリジェンス、法務デュー・デリジェンスを統合した総合的なデュー・デリジェンス・レポートをクライアントに提供しています。ビジネス・デュー・デリジェンスのスキルは、保険ビジネスと保険マーケットに精通していることが求められます。また、財務デュー・デリジェンスのスキルは、保険会計・保険会社税務・保険数理に精通していることが求められます。
税務デュー・デリジェンスは、アソシエイト税理士、法務デュー・デリジェンスはアソシエイト弁護士との協同でレポートを作成しています。税務・法務においても、少額短期保険会社のデュー・デリジェンスの経験豊富なプロフェッショナルが対応しています。
少額短期保険会社のM&Aは、①初期的分析、②意向表明、③デュー・デリジェンス、④バリュエーション、⑤基本合意書の締結、⑥保険主要株主申請と認可、⑦株式譲渡契約書の締結、⑧株式譲渡実行といった流れで進んでいきます。
少額短期保険会社の株式取得プロセスですが、制度的には届出事業となっていても、実質的には許認可事業に類似する運用となっているため、各プロセスにおいて監督官庁(各地の財務局)との協議しながら進めていくことになります。
弊社は、全国各地の財務局においてクライアントをサポートしてきましたので、行政当局対応を含めたプロセス管理に豊富な経験があります。
プロセス管理において、保険主要株主申請とその認可取得に関しては、行政当局との折衝が必要になりますので、スケジュールはM&A当事者の思い通りには進むとは限りません。この点に関しては、すでに多くのクライアントの保険主要株主申請をサポートした経験がありますので、概ね、どの程度の期間が必要になるかは予測できます。株式譲渡の価格面で売主と買主との折り合いがつかないような場合、また、デュー・デリジェンスで重大な検出事項が出てきたような場合には、当然ながら協議・検討等に相応の時間を要することになります。
M&Aにおいては、当初の見立てとは異なる状況に遭遇することは稀ではありませんが、かかる状況においても柔軟なスケジュールの見直しを行い、結果としては最短スケジュールでエグゼキューションできるようにサポートしております。
M&Aのプロセスは、最終契約書(株式譲渡契約書)が締結され、株式譲渡代金が決済されることによって完結します。少額短期保険会社のM&Aでは、会社法等の規定に従うほか、保険業法・保険業法施行規則など、保険業特有の規定も充足していなければなりません。そのため、株式譲渡契約書において、「行政当局から保険主要株主としての承認を得ること」を停止条件としています。
保険業法第二条の二において、いわゆる「みなし保険主要株主」に関する規定がありますが、難解であることから、弊社クライアントからも多くの質問を頂いております。弊社では株式譲受人の組織を詳細に検討して、みなし保険主要株主の該当性に関する判断をサポートしております。
また、クロージングにあたって、株式の譲渡人に求める実務上の義務に関しての誓約が多岐にわたります。かかる誓約を過不足なく株式譲渡契約書に盛り込む必要がありますが、そのためには、少額短期保険会社の実務にも精通している必要があります。
また、株式譲渡後に買収会社を傘下にある既存の少額短期保険会社と合併させる場合には、ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)に関する知識・経験が重要となります。そこで、PMIを考慮に入れた株式譲渡契約書についてもサポートを行っております。