少額短期保険業者は、少額短期保険募集人が保険契約者等の利益を害することがないよう、適正な保険募集管理態勢を確立しなければならない。
保険募集とは、以下の①から④の行為をいう。
少額短期保険業者向けの監督指Ⅱ−3−3−1(1)①
なお、上記④に該当するか否かについては、一連の行為の中で、当該行為の位置付けを踏まえたうえで、以下の①および②の要件に照らして、総合的に判断するものとする。
少額短期保険募集人の登録および届出の制度の目的は、消費者が適切な保険商品を購入できるようにすることにある。少額短期保険業者が販売する保険商品は、しばしば少額て短期間の保険であるため、保険契約者に対する説明責任が特に重要である。募集人が十分な知識と誠実な対応をしていなければ、消費者にとって不利益を被ることがあるため、これらの制度が重要である。
少額短期保険募集人は、その立場や役職および取扱う保険商品の種類に応じて登録または届出を行う必要がある。
保険業法275条第1項第3号、保険業法276条、保険業法302条
少額短期保険募集人のうち、上記④および⑥の保険募集を行う者を特定少額短期保険募集人という。
保険業法施行規則212条の3
第1分野 | 第2分野・第3分野 | |
---|---|---|
少額短期保険業者の役員・使用人 | ① 登録制 | ④ 登録・届出不要 |
少額短期保険業者の委託を受けた者 | ② 登録制 | ⑤ 登録制 |
少額短期保険業者の委託を受けた者の役員・使用人 | ③ 登録制 | ⑥ 届出制 |
※ 第1分野は、生命保険に関する分野である。第2分野は、損害保険に関する分野である。第3分野は、医療保険や介護保険などに関する分野である。
保険代理店の大型化や保険募集チャネルの多様化が進むなかで、いわゆる比較サイトや紹介行為のように、契約見込客の発掘から契約成立に至るまでの広い意味での保険募集プロセスのうち、必ずしも保険募集に該当しない行為について、保険募集人以外の者が行うケースが増加している。
このような広義の募集プロセスのうち保険募集に該当しない行為(以下、「募集関連行為」という。)については、直ちに募集規制が適用されるものではないものの、保険契約者等の保護の観点から、保険会社または保険募集人においては、募集関連行為を第三者に委託し、またはそれに準じる関係に基づいて行わせる場合には、当該募集関連行為を受託した第三者(以下、「募集関連行為従事者」という。)が不適切な行為を行わないよう、以下の①から③の点に留意しなければならない。
少額短期保険業者向けの監督指針
Ⅱ−3−3−1(2)
以下の行為は、基本的に保険募集・募集関連行為のいずれにも該当しないものと考えられる。
以下の行為は、保険募集に該当し得ると考えられる。
少額短期保険における情報提供義務の意義は、消費者が少額かつ短期の保険契約を結ぶ際に十分な情報を提供することによって、契約者がリスクを理解し、適切な判断を行えるようにすることである。少額短期保険はその名の通り、保険金額が少額で、契約期間も短期間であるため、消費者が契約条件をしっかりと理解しないまま契約してしまうリスクが高くなる可能性がある。このため、情報提供義務の強化が重要となる。
そこで、保険業法では、少額短期保険業者または少額短期保険募集人は、保険契約の締結または保険募集等に関し、保険契約の種類および性質等を踏まえ、保険契約の内容その他保険契約者等に参考となるべき情報の提供を適正に行うことを求めている。
保険業法第294条
情報の提供を行うにあたっては、顧客が保険商品の内容を理解するために必要な情報(以下、「契約概要」という。)と顧客に対して注意喚起すべき情報(以下、「注意喚起情報」という。)について、記載しなければならない。
少額短期保険業者向けの監督指針Ⅱ−3−3−2(1)②
記載項目 | |
---|---|
① 「契約概要」の項目 |
|
② 「注意喚起情報」の項目 |
|
③ その他の保険契約者等に参考となるべき情報 |
少額短期保険業者またはお少額短期保険募集人は、保険契約の内容その他保険契約者等の参考となるべき情報の提供を行う場合には、保険契約者および被保険者に対し、保険契約の内容その他保険契約に関する情報を記載した書面を用いて説明し、その書面の交付しなければならない。
保険業法施行規則第227条の2第3項第1号
また、保険契約の締結または保険契約に加入することの判断に参考となるべき事項に関する説明をしなければならない。
保険業法施行規則第227条の2第3項第2号
以下の保険契約を取り扱う場合は、保険契約者または被保険者との合意に基づく方法その他当該保険契約の特性等に照らして、施行規則に規定された方法によらなくとも説明が可能である。
保険業法施行規則第227条の2第3項第3号
保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして、次の場合は被保険者への情報提供は不要とされている。
少額短期保険業者および少額短期保険募集人は、「契約概要」および「注意喚起情報」を記載した書面の交付またはこれに代替する電磁的方法による提供を行うために、以下のような体制を整備しなければならない。
少額短期保険業者向けの監督指針Ⅱ−3−3−2(2)
少額短期保険業者または少額短期保険募集人は、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等の提案、当該保険契約の内容の説明および保険契約の締結等に際して、顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供しなければならない。
保険業法第294条の2
意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度等を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図らなければならない。そのために、公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、少額短期保険業者または少額短期保険募集人の創意工夫による方法で行わなければならない。
具体的には、例えば、以下の ①から④のような方法が考えられる。
少額短期保険業者向けの監督指針Ⅱ−3−3−2(3)①
例えば、以下のような顧客の意向に関する情報を把握・確認しなければならない。
少額短期保険業者向けの監督指針Ⅱ−3−3−2(3)②
既存契約の更新や一部変更の場合において、実質的な変更に該当する場合は、当該変更部分について適切に意向把握・確認を行うものとする。
少額短期保険業者および少額短期保険募集人においては、法第294条の2に規定する措置に関し、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客の意向に合致した内容であることを顧客が確認する機会を確保し、顧客が保険商品を適切に選択・購入することを可能とするため、そのプロセス等を社内規則等で定めるとともに、所属する少額短期保険募集人に対して適切な教育・管理・指導を実施するほか、以下のような体制が整備しなければならない。
少額短期保険業者または少額短期保険募集人のいずれか、または双方において、意向把握に係る業務の適切な遂行を確認できる措置を講じなければならない。ているか。例えば、適切な方法により、保険募集のプロセスに応じて、意向把握に用いた帳票等(例えば、アンケートや設計書等)であって、顧客の最終的な意向と比較した顧客の意向に係るものおよび最終的な意向に係るものを保存するなどの措置を講じなければならない。
少額短期保険業者または少額短期保険募集人において、契約の申込みを行おうとする保険商品が顧客の意向に合致した内容であることを顧客が確認する機会を確保し、顧客が保険商品を適切に選択・購入することを可能とするため、適切な遂行を確認できる措置を講じなければならない。
(注)団体保険について、保険契約者である団体が被保険者となる者に対して加入勧奨を行う場合は、保険商品が被保険者の意向に合致した内容であることを確認する機会を確保するため、以下の(ア)から(コ)までのような体制整備と同程度の措置を講じなければならない。
少額短期保険業者または少額短期保険募集人は、補償重複のうち、顧客の意向に基づかないものについて、その発生防止や解消を図る観点から、新規契約や契約の更新・更改(以下、「新規契約等」という。)にあたって、顧客に対し、補償重複に係る説明等が十分かつ適切に行われることを確保するため、以下の取組みを行わなければならない。
保険業法は、消費者の利益を保護するために保険募集に関する禁止行為を定めている。保険募集人や保険会社は、誠実に業務を行い、顧客に対して適正な情報を提供しなければならないと規定されている。これに違反すると、業務停止や罰金、免許取り消しなどの法的措置が取られる可能性があるため、十分な注意が必要である。
一定金額の金銭をいわゆる解約控除等として保険契約者が負担することとなる場合があること、一定期間の契約継続を条件に発生する配当に係る請求権を失う場合があること、被保険者の健康状態の悪化等のため新たな保険契約を締結できないこととなる場合があることなど、不利益となる事実を告げなければいけない。また、顧客が不利益となる事実を了知した旨を十分確認しなければならない。
保険業法第300条第1項第4号関係
保険契約者または被保険者に対して、保険料の割引や割戻し、その他特別の利益の提供を約束、または提供する行為をしてはならない。
保険業法第300条第1項第5号関係
少額短期保険業者および少額短期保険募集人が、保険契約の締結または保険募集に関し、保険契約者または被保険者に対して、各種のサービスや物品を提供する場合においては、以下のような点に留意して、「特別利益の提供」に該当しないものとしなければならない。
募集人組織を連鎖的に拡大させることを目的とした手数料の設定を行っている場合や保険募集手数料が保険募集を行う他の募集人等の募集実績により加算されるような手数料設定を行っている場合、特に特定商品取引法における連鎖販売取引あるいはそれに類似する手法を用いて保険商品の販売を行う場合においては、募集人等となる保険契約者に対して利益を約すること等「特別利益の提供」に該当するものとしなければならない。
なお、この場合には、保険募集に従事する者が少額短期保険募集人であるかについても留意する。
少額短期保険業者は、少額短期保険募集人および金融サービス仲介業者に対し、保険料の割引、割戻し等を目的とした保険募集および保険媒介業務を行うことがないよう指導および管理等の措置を講じているか。
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対して、1の保険契約の契約内容につき、他の保険契約の契約内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げたり、または表示する行為をしてはならない。
保険業法第300条第1項第6号関係
少額短期保険業者および少額短期保険募集人が、保険契約の締結または保険募集に関し、保険契約者または被保険者に対して、各種のサービスや物品を提供する場合においては、以下のような点に留意して、「特別利益の提供」に該当しないものとしなければならない。
② 他の保険会社等との商品等との比較表示を行う場合には、書面等を用いて次の事項を含めた表示が行われ、かつ、他社商品の特性等について不正確なものとならないようにしなければならない。
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対して、将来における契約者配当または社員に対する剰余金の分配その他将来における金額が不確実な事項について、断定的判断を示し、または確実であると誤解させるおそれのあることを告げ、もしくは表示する行為をしてはならない。
保険業法第300条第1項第7号関係
保険契約者または被保険者に対して、威迫し、または業務上の地位等を不当に利用して保険契約の申込みをさせ、または既に成立している保険契約を消滅させる行為をしてはならない。
保険業法第300条第1項第9号関係
保険契約者もしくは被保険者または不特定の者に対して、保険契約等に関する事項でその判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、誤解させるおそれのあることを告げ、または表示する行為を行ってはならない。
保険契約者に対して、保険契約に係る保険の種類または保険会社等または外国保険会社等の商号もしくは名称を他のものと誤解させるおそれのあることを告げる行為を行ってはならない。
保険業法施行規則第234条第1項第5号関係
「その他保険募集に関し著しく不適当な行為」に抵触する行為を排除する措置を講じなければならない。
保険業法第307条第1項第3号関係
保険募集態勢について問題があると認められる場合には、少額短期保険募集人に対し、必要に応じて法第305条に基づき報告を求めるとともに、少額短期保険業者の態勢の検証も併せて行い、重大な問題があると認められる場合には行政処分を行うものとする。 また、管轄区域内の少額短期保険募集人が他の財務局に登録している少額短期保険業者に属している場合(複数乗合含む。)は、監督対応について当該財務局と協議のうえ、対応すること。
一般社団法人日本少額短期保険協会では「募集文書等の表示に関するガイドライン 」を策定している。
募集文書等の表示に関するガイドライン
その他の各項目に関する規制は以下よりご覧いただけます。