少額短期保険業者の事業年度は、4月1日から翌年3月31日までである。
保険業法第272条の15
少額短期保険業者は、事業年度ごとに、業務および財産の状況を記載した業務報告書を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない。
保険業法第272条の16第1項
業務報告書は、事業報告書、附属明細書、株主総会に関する事項等に関する書面、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書、および保険金等の支払能力の充実の状況に関する書面に分けて、別紙様式第16号の17により作成し、事業年度終了後4ヶ月以内に提出しなければならない。
保険業法施行規則第211条の36第1項
/ 保険業法施行規則別紙様式第16号の17
さらに、資本金の額が3億円以上の少額短期保険業者は、業務報告書のほか、中間業務報告書を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない。
保険業法第272条の16第2項
中間業務報告書は、事業年度開始の日から当該事業年度の9月30日までの間の業務および財産の状況について、中間事業報告書、中間貸借対照表、中間損益計算書、中間キャッシュ・フロー計算書 、中間株主資本等変動計算書および保険金等の支払能力の充実の状況に関する書面に分けて、別紙様式第16号の18により作成し、当該期間終了後3ヶ月以内に提出しなければならない。
保険業法施行規則第211条の36第2項
/ 保険業法施行規則別紙様式第16号の18
また、特定少額短期保険業者が子会社等を有する場合には、特定少額短期保険業者およびその子会社等の業務および財産の状況を連結して記載した中間業務報告書および業務報告書を作成し、中間業務報告書は当該期間終了後3ヶ月以内、業務報告書は事業年度終了後4ヶ月以内に内閣総理大臣に提出しなければならない。
保険業法第272条の16第3項
/ 保険業法施行規則第211条の36第3項
少額短期保険業者は、事業年度ごとに、業務および財産の状況に関する事項を記載した説明書類(ディスクロージャー)を作成し、営業所または事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。
保険業法第272条の17
また、特定少額短期保険事業者で子会社等を有する場合には、当該保険会社および当該子会社等につき連結して業務および財産の状況に関する事項を記載した説明書類を作成し、営業所または事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。
保険業法第111条第2項
/ 保険業法施行規則第211条の36
さらに、少額短期保険業者は、保険契約者その他の顧客が当該少額短期保険業者およびその子会社等の業務・財産の状況を知るために参考となるべき事項の開示に努めなければならない。
保険業法第111条第6項
業務および財産の状況に関する事項を記載した説明書類は、電磁的記録をもって作成することができる。
保険業法第111条第3項
説明書類が電磁的記録をもって作成されているときは、営業所または事務所において電磁的記録に記録された情報を電磁的方法により不特定多数の者が提供を受けることができる状態に置くことで、備え置き・公衆の縦覧とみなす。
保険業法第111条第4項
説明書類の備え置き・公衆の縦覧の期間は、事業年度経過後4ヶ月以内に縦覧を開始し、翌事業年度の説明書類の縦覧を開始するまでの間とする。
保険業法第111条第5項
ディスクロージャーに記載する事項 |
---|
① 少額短期保険業者の概況および組織に関する次に掲げる事項
|
② 少額短期保険業者の主要な業務の内容 |
③ 少額短期保険業者の主要な業務に関する次に掲げる事項
|
④ 少額短期保険業者の運営に関する次に掲げる事項
|
⑤ 少額短期保険業者の直近の2事業年度における財産の状況に関する次に掲げる事項 |
⑥ 事業年度の末日において、当該少額短期保険業者が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象または状況その他当該少額短期保険業者の経営に重要な影響を及ぼす事象(以下ここにおいて「重要事象等」という。)が存在する場合には、その旨およびその内容、当該重要事象等についての分析および検討内容並びに当該重要事象等を解消し、または改善するための対応策の具体的内容 |
主要な業務の状況を示す指標等 |
---|
① 保険種目の区分ごとの正味収入保険料の額および元受正味保険料の額 |
② 保険種目の区分ごとの支払再保険料の額 |
③ 保険種目の区分ごとの保険引受利益の額 |
④ 保険種目の区分ごとの正味支払保険金の額および元受正味保険金の額 |
⑤ 保険種目の区分ごとの回収再保険金の額 |
保険契約に関する指標等
|
主要な業務の状況を示す指標等 |
① 保険種目の区分ごとの支払備金の額および責任準備金の額 |
② 利益準備金および任意積立金の区分ごとの残高 |
③ 損害率の上昇に対する経常利益または経常損失の額の変動 | 資産運用に関する指標等 |
① 現預金、元本補てんの契約のある金銭信託(外貨建てのものを除く。)、有価証券、運用資産計、総資産の区分ごとの残高および総資産に対する割合 |
② 現預金、元本補てんの契約のある金銭信託(外貨建てのものを除く。)、有価証券、小計、その他、合計の区分ごとの利息配当収入の額およびその他、合計を除く区分ごとの運用利回り |
③ 保有有価証券の種類別(国債、地方債、政府保証債、証券取引法第2条第1項第3号に規定する有価証券、合計の区分をいう。)の残高および合計に対する構成比 |
④ 国債証券、地方債証券、政府保証債証券、証券取引法第2条第1項第3号に規定する有価証券、合計の区分ごとの保有有価証券利回り |
⑤ 有価証券の種類別の残存期間別残高 |
普通責任準備金 | 異常危険準備金 | 契約者配当準備金等 | 合 計 |
---|---|---|---|
死亡保険 火災保険 賠償責任保険 傷害保険 医療保険 その他の保険 |
|||
計 |
(記載上の注意)
少額短期保険業者の収益等の計上については、下記のとおり取り扱うものとする。
少額短期保険業者向けの監督指針Ⅱ-2-1-4
ただし、一般に公正妥当と認められる会計基準に照らし、より合理的かつ妥当な計上方法がある場合には、下記にかかわらず、当該計上方法により取り扱うことができる。
決算締切日までに入金報告書および申込書その他保険料計上に必要な書類が到着している契約については、すべて当該事業年度の収入に計上すること。
ただし、上記書類が決算締切日までに到着したもので、内容不備のため保険料率の審査決定、保険責任の有無の確認ができなかったものについてはこの限りでないこと。
なお、決算処理にあたっては、上記書類の遅延ないし内容の不備の解消に特に留意し、計上保険料の翌年度へのずれ込み、または計上洩れを極力防止するよう努めること。
回払保険料の計上については、初回保険料はイ)に準じて取扱うものとし、次回以後保険料については、決算締切日までに当該契約の約款に定める保険料支払期日応当月が到来しているものは当該事業年度の収入として計上すること。
保険金の支払いにより契約者から取得した求償権または残存物については、当該求償権の行使(裁判の判決または当事者間の合意がないものは除く。)または残存物の売却によって回収が見込まれる金額を当該事業年度の支払備金から控除して経理すること。
少額短期保険業者は、会社の成立後の最初の5事業年度の事業費に係る金額等を、貸借対照表の資産の部に計上することができる。この場合、当該計上した金額を当該少額短期保険業者の成立後10年以内に償却しなければならない。
保険業法第113条
/ 保険業法施行規則第211条の40
事業費等には、会社の成立後の最初の5事業年度の事業費のほかに、会社の成立により発起人が受領する報酬、その他の特別の利益および会社の負担する設立に関する費用、および開業準備のために支出した金額が含まれる
保険業法施行規則第61条の2
少額短期保険業者である株式会社は、契約者配当を行う場合は、公正かつ衡平な分配をするための基準に従い、行わなければならない。
保険業法第114条
また、少額短期保険業者である株式会社が契約者配当を行う場合には、保険契約の特性に応じて設定した区分ごとに、契約者配当の対象となる金額を計算し、以下のいずれかの方法により、またはそれらの方法の併用により行わなければならない。
保険業法施行規則第211条の41
契約者配当の計算方法 |
---|
① 保険契約者が支払った保険料および保険料として収受した金銭を運用することによって得られる収益から、保険金、返戻金その他の給付金の支払、事業費の支出その他の費用等を控除した金額に応じて分配する方法 |
② 契約者配当の対象となる金額をその発生の原因ごとに把握し、それぞれ各保険契約の責任準備金、保険金その他の基準となる金額に応じて計算し、その合計額を分配する方法 |
③ その他上記①および②号に掲げる方法 |
なお、少額短期保険業者である株式会社が契約者配当に充てるため積み立てる準備金は、契約者配当準備金とする。
保険業法施行規則第211条の42第1項
少額短期保険業者は、毎決算期において、保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てなければならない。
保険業法第116条第1項
なお、再保険を付した場合は、その再保険に付した部分に相当する責任準備金を積み立てないことができる。
保険業法施行規則第71条第1項
準備金の種類 | 準備金の内容 |
---|---|
普通責任準備金 | 次の①または②うちいずれか大きい金額
|
異常危険準備金 | 保険契約に基づく将来の債務を確実に履行するため、将来発生が見込まれる危険に備えて計算した金額 |
契約者配当準備金等 | 契約者配当準備金およびこれに準ずるもの |
異常危険準備金の積立ては、金融庁長官が定める積立ておよび取崩しに関する基準によるものとする。ただし、少額短期保険業者の業務または財産の状況等に照らし、やむを得ない事情がある場合には、金融庁長官が定める積立てに関する基準によらない積立てまたは取崩しに関する基準によらない取崩しを行うことができる。
保険業法施行規則第211条の46第2項
少額短期保険業者は、毎決算期において、保険金、返戻金その他の給付金で、保険契約に基づいて支払義務が発生したものその他これに準ずるものとして内閣府令で定めるものがある場合において、保険金等の支出として計上していないものがあるときは、支払備金を積み立てなければならない。
保険業法第117条第1項
支払備金の種類 | 積立て金額 |
---|---|
保険契約に基づいて支払義務が発生した保険金等(当該支払義務に係る訴訟が係属しているものを含む。)のうち、少額短期保険業者が毎決算期において、まだ支出として計上していないものがある場合 保険業法施行規則第73条第1項第1号 |
当該支払のために必要な金額(未払金) |
まだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由が既に発生したと認める保険金等がある場合 保険業法施行規則第73条第1項第2号 |
その支払のために必要なものとして金融庁長官が定める金額(IBNR備金) |
少額短期保険業者は、毎決算期において、その所有する株式その他の価格変動による損失が生じ得る資産について、それぞれの資産の帳簿価額に同表の積立基準の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額以上を価格変動準備金として積み立てなければならない。
保険業法第115条第1項
この場合において、当該価格変動準備金の限度額は、毎決算期において保有する資産をそれぞれ同表の上欄に掲げる資産に区分してそれぞれの資産の帳簿価額に同表の積立限度の欄に掲げる率を乗じて計算した金額の合計額とする。
保険業法施行規則第211条の44
対象資産 | 積立基準 | 積立限度 |
---|---|---|
国債およびその他の有価証券 | 0.2/1000 | 5/1000 |
子会社株式 | 1.5/1000 | 50/1000 |
少額短期保険業者は、取締役会において保険計理人を選任し、保険料の算出方法その他の事項に係る保険数理に関する事項として内閣府令で定めるものに関与させなければならない。
保険業法120条第1項
保険計理人の関与事項 |
---|
① 保険料の算出方法 |
② 責任準備金の算出方法 |
③ 契約者配当または社員に対する剰余金の分配に係る算出方法 |
④ 支払備金の算出 |
⑤ その他保険計理人がその職務を行うに際し必要な事項 |
保険計理人は、保険数理に関して必要な知識および経験を有する者として、以下のいずれかの該当する者でなければならない。
保険業法第120条第2項
保険計理人の要件に該当する者 |
---|
① 公益社団法人日本アクチュアリー会の正会員であり、かつ、保険数理に関する業務に3年以上従事した者 |
② 公益社団法人日本アクチュアリー会の準会員(資格試験のうち5科目以上に合格した者に限る。)であり、かつ、保険数理に関する業務に5年以上従事した者 |
少額短期保険業者の場合、保険計理人は必ずしも常に業務に従事する役職員である必要はない。多くの少額短期保険業者は、外部のコンサルティング会社またはアクチュアリーファームに所属するアクチュアリーと保険計理人に関する業務委託契約を締結し、保険計理人に就任してもらっている。
少額短期保険業者は、保険計理人を選任したとき、または保険計理人が退任したときは、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。
保険業法第120条第3項
保険計理人は、毎決算期において、次の①〜③の基準により、下表の保険計理人の確認事項について確認しなければならない。
保険業法施行規則211条の51
保険計理人の確認基準 |
---|
① 責任準備金が適正に積み立てられていること。 |
② 契約者配当または社員に対する剰余金の分配が適正に行われていること。 |
③ 将来の時点における資産の額として合理的な予測に基づき算定される額が、当該将来の時点における負債の額として合理的な予測に基づき算定される額に照らして、少額短期保険業の継続の観点から適正な水準に満たないと見込まれること。 |
保険計理人の確認事項 |
---|
① 保険計理人は、毎決算期において、次に掲げる事項について、内閣府令で定めるところにより確認し、その結果を記載した意見書を取締役会に提出しなければならない。 保険業法第121条第1項
|
② 保険計理人は、意見書を取締役会に提出した後、遅滞なく、その写しを内閣総理大臣に提出しなければならない。 保険業法第121条第2項 |
③ 内閣総理大臣は、保険計理人に対し、意見書の写しについてその説明を求め、その他その職務に属する事項について意見を求めることができる。 保険業法第121条第3項 |
その他の各項目に関する規制は以下よりご覧いただけます。